熱処理の問題点「脱炭」

 熱処理で発生する問題点、焼き入れ変形、焼き割れとお話ししてきて、今回は代表的なトラブルの3回目です。脱炭・脱炭層についてお話します。

 
[脱炭・脱炭層]
 素材となる鋼材に熱処理を行うと、加熱中に鋼の表面には酸化物が形成することがあります。酸化物中の酸素と鋼中の炭素が結合して一酸化炭素や二酸化炭素となり、その結果、鋼の炭素量がが減少してしまうことを脱炭といいます。反対に、鋼材の炭素量が増えることは浸炭といいます。こちらでお話ししました。浸炭は、鋼材の表面を硬くすることができる熱処理です。

 脱炭は、大気での熱処理、塩浴(還元性の無機塩溶液の中で行う熱処理)・油中焼入れ(焼入れを油中(ホットオイル)で行う)、大気中での焼き戻し時に発生することがあります。素材の加熱状況、冷却状況、雰囲気状態や不安定な熱処理によって、脱炭の状況は異なります。大気中で熱処理をおこなう場合、鋼材の水分量が多いと、加熱中に酸化が進みやすく、脱炭が生じる可能性も大きくなります。

 脱炭には、鋼材の中の炭素がほとんどなくなる全脱炭、表面やある一部分のみの炭素量が低下する部分脱炭などがあります。

 脱炭の一番の問題点は何でしょうか。脱炭層では鋼の硬さが低下しています。最終的な製品となった時に、通常の硬さである部分、非常に軟化してしまった部分(硬化不足)など、硬さにばらつきがみられるようになります。これが一番の問題点です。炭素量が不足することで鋼材表面のマルテンサイト化が不十分にり、鋼材表面に残留応力が生じて強度が不足します。

 焼き入れ中に脱炭を起こさせないために、鋼材の表面の錆などを落としておく前処理が大切になってきます。また、空気に触れさせずに真空中で熱処理を行ったり、空気ではなく不活性のガスの中で熱処理を行うことも有効です。これらは無酸化熱処理と呼ばれます。

 脱炭層は焼入れを行っても十分に硬化しません。鋼材に脱炭ができてしまった場合、元に戻すことは簡単ではありません。脱炭状態をもとに戻す方法として、浸炭状態で加熱する復炭処理などがあります。また、鋼材を物理的に研磨して、脱炭層を削り取ってしまったりする方法なども一般的な対策としてとられています。

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