その他の熱処理 ~「溶体化熱処理」について~

 熱処理の基本、焼き入れ、焼きもどし、焼ならし、焼なまし以外の熱処理についてみていきます。前回はプリハードン処理をご説明しました。今回は、「溶体化熱処理」についてご説明いたします。

 鋼鉄など様々な加工の素材となる合金は、元素が混ざり合って作られています。実は元素にも「溶けやすい」「溶けにくい」が存在します。
 水に砂糖を溶かしてみましょう。溶けて砂糖水になります。次に湯に砂糖を溶かしてみましょう。水の時よりも多くの砂糖が溶け、より甘い砂糖水になります。これが元素にも言えるのです。
 固体の状態にある合金を加熱することで、合金の元素が均一に混ざり合い、期待される性質を発揮するようになります。この処理のことを「溶体化熱処理」と言います。
 
 溶体化熱処理は、主にオーステナイト系ステンレス鋼を作り出すのに行われます。オーステナイトというのは、元となる鉄に炭素や合金の元素などの他の元素が溶けている状態のことを指します。
 
 常温常圧の鉄はフェライト結晶と呼ばれる体心立方格子の構造をしています。この状態では、鉄と他の元素が溶け合うことはあまりありません。しかし、これを 920 ℃から 1150 ℃程度まで加熱することによりオーステナイト結晶と呼ばれる面心立方格子構造となります。この状態になると、合金の元素がオーステナイト結晶の中に溶け込み、均一となります。このことを「固溶化」といいます。
 固溶化した状態から急冷すると、鉄はフェライト結晶には戻りません。均一に溶け込んだオーステナイト結晶のままの状態を保つことができます。この熱処理が「溶体化熱処理」です。
 
 ステンレス鋼にはニッケルが含まれています。ニッケルを含むことで、オーステナイト状態が安定化されたまま常温で存在することができるのです。

 溶体化熱処理は、高温のオーステナイト結晶状態のときに現れていた金属の特性を、常温となっても得られることができる利点があります。溶体化熱処理を行ったオーステナイト系ステンレス鋼は耐食性・耐熱性・耐寒性に優れています。また、磁性がないという特性がうまれます(磁石にくっつきません)。(加工されるとマルテンサイト変態が起こるため、磁性が出現するようになります。)
 
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